大学院生の生態。日頃、何やってるの?もしかしてニート?
理系の大学生のほとんどは、大学院に進学します。具体的には、博士前期課程(修士過程)に進学するわけですが、大学院生って一体どんな生き物なのでしょうか。私、Kもとある国公立大学の大学院生です(そんなにレベルの低い大学でもありません)。小学校・中学校と友達は少なかったのですけれども、それでも幾許かの旧友には色々と質問されます。これから大学を目指すみなさんは、大学に行く前に知っておいてほしいこともたくさんあります。よく聞かれる質問へのQ&Aをラインナップしますので、興味のある方はのぞいてみてください。
- Q1.なぜ大学院に進学したの?
- Q2.どんな研究をしているの?
- Q3.つまりニートなの?
- Q4.一日のスケジュールはどんな感じ?
- Q5.実験って楽しいの?
- Q6.ブログっていつ書いてるの?
- 最後に大事なことを。
Q1.なぜ大学院に進学したの?
A1.そもそも進学しないという選択肢はないから。
大学を出た後、一般的にはどこぞの企業に就職するわけです。理系学生の大半は、技術系や研究系への就職を希望したりします。そこで重要なのが、「実験ができる人間であることを示す」ことなのです。
大学の4年間のなかで、実験を行なっているのは最後の1年だけです。大学で行われる研究は、インパクトの大小はあれどどれも世界最先端。初めからうまく行くはずもなく、1年で結果が出せるわけでもないのです。修士号を取得すれば、少なくとも3年間実験を続けることができた人間であることが示されるのです。
もう一つ。せっかくそこそこの国公立大学に進学したわけですが、このご時世では大学のネームバリューなどほとんど役に立ちません。(それでも有名大学ならば、選ばなければ就職に困ることはありません)ネームバリューがない状態で、試験もほとんどなく、数ある学生の中で差をつけるためには「ステータス」が必要です。学部卒よりも修士修了の方が、企業の評価は高くなる場合があるのです。(さらに就職後の給与にも大きく関わります)
もっとも、修士は大したステータスでもないのですが。学部入試とは異なり、東京大学の修士過程に入り修了することはそう難しいことではありません。研究の世界では、修士修了はほとんど役に立ちません。それでも、学部卒よりもある一定分野では深い知識をもち、即戦力になりやすいというのは事実です。
Q2.どんな研究をしているの?
A2.タンパク質の機能について研究しています。
研究の内容について詳細に聞こうとしてくる旧友は多くいます。研究しているのだから、素人にわかりやすく説明できるでしょ?と思っているようですが、これは無謀な話です。小学1年生に、三角関数の積分の原理を説明しろ、受験生でいつもやっているんだから、できるだろ?と言われたって、無理な話です。同じことです。説明する相手によって、難易度が変わります。簡単な順に並べると、
(簡単)「理系の大学院生or修了」<「理系大学生or卒業生」<「文系大学生or卒業生」<その他(難しい)
となります研究の内容を説明するためには、最低限の知識のバックグラウンドが必要なのです。遺伝子組み換えなどをやるわけですが、「遺伝子組み換え」と言った途端に危険なものだと考えはじめてしまう方も多いようです。説明に説明を重ね、その説明を理解する能力が相手にもあることが、研究内容を説明するための最低条件です。なお、大学院生同士だって、友達の研究内容を1割も理解できないでしょう。
Q3.つまりニートなの?
A3.ニート、かもしれません。
大学院生は最年少でも22歳。いい歳して「勉強している」と言いながら社会に出ていないので、ある意味ニートかもしれません。基本的に毎日実験しているのが理系の大学院生です。年間多額の学費を払ってもらいながら、税金を使わせていただきながら、実験をさせてもらっているのです。自立する努力をするわけでもなく、ニートとあまり変わりませんね(笑)
しかし、理系大学院生は実験を通してスキルアップを図ろうとしています。成長が皆無なニートと比べれば、大きく異なります。もちろん、何もしないまま大学院を終える場合だってありますので、学生次第と言ったところでしょうか。
Q4.一日のスケジュールはどんな感じ?
A4.具体的に見せましょう。
私は生化学系のラボにいますので、大腸菌や細胞の都合によってスケジュールは大きく変わります。大腸菌を培養して(育てて)回収するためには20時間くらいかかることは当たり前です。自分の都合と、大腸菌の都合を考えながらスケジュールを組みます。例えば、とある忙しめな1日のスケジュールはこんな感じです。
- 08:30 起床
- 08:45 登校・講義を受ける
- 10:15 講義終了
- 10:30 前日から培養していた大腸菌を回収
- 11:00 ミーティングの資料作り
- 12:00 ミーティング
- 13:00 昼食
- 13:15 休憩(ブログを書くなど)
- 14:00 大腸菌からタンパク質を取り出す
- 15:30 タンパク質の回収用に機械をセットアップ
- 16:00 作業がひと段落(機械に引き継ぐ)
- 17:00 機械のメンテナンス
- 17:15 タンパク質の精製用に機械をセットアップ
- 18:00 記録の整理
- 18:30 学食で夕食
- 19:00 一次帰宅
- 20:00 お風呂など。暇時間。ブログを書いたり、ネットサーフィン。
- 24:00 大学に行く
- 24:15 機械のメンテナンス・サンプルの回収
- 24:30 サンプルの濃縮
- 25:00 帰宅(一晩機械の洗浄を自動で行う)
1日に2回大学に行くことはそう頻繁にはありませんが、別に毎日暇をしているわけでもありません。大学院生もそこそこ忙しい日々を送っているのです。(といっても専ら暇な日もありますし、暇な日を調整して作ることもできます。進捗に影響を与えないように週末を3連休にしたりも不可能ではありません。)
研究室によっては、コアタイムという「絶対に研究室にいなければいけない時間」というのもあります。過去には、9時から21時までは最低いなければならず、その間に休憩は1時間以上とってはいけないという研究室もあったとか…。
本気で実験を進めようと思ったら、1日12時間くらいは何かしら作業をしなければいけないのです。
人によっては「月・月・火・水・木・金・金」と週休0日毎日15時間ワークという人もいますが、私は土日は休むと決めています。趣味もやらないと、気が狂ってしまいそうなので。
Q5.実験って楽しいの?
楽しい…?そんな甘いもんじゃない。
毎日、いい結果が出るわけでもないわけです。「実験失敗」というのは、実験者のミスによる場合ではなく、「その方法ではうまくいかない」という場合が多いのです。そりゃ、上手いこと実験が進んで、いい結果も得られ、論文を書いて世界に発表するとなれば楽しいでしょう。しかし、そうもうまくはいかないものです。大学院生はお酒が大好きです。これは、毎日の辛い実験からの現実逃避ができるからかもしれません。
楽しい時もある。しかし、苦しい時の方が多い。これが現実です。
Q6.ブログっていつ書いてるの?
時間を作って書いています。
時間がない中でも、時間を作ることはそう難しいことではありません。記事のネタは1日過ごしてればそこらへんにたくさん落っこちています。感性が云々の問題ではありません。新聞記事でも、ネットニュースでもなんでもいいから、何か情報に触れた瞬間、何か考えることがあるはずです。たくさんある隙間時間に、そのネタを膨らませていき、1時間くらい時間が取れるときに一気に書き上げるのが私のスタイルです。ちなみに3000文字の記事を書くのに必要とする時間は、およそ15から30分くらいです。学部生時代のレポートは1万文字を越えることがざらだったので、考えながら文字を書くことには慣れているのです。
私に限ったことも多い内容でしたが、理系大学院生はみんなそこそこ忙しいというのは実情です。研究内容を聞いてもよくわからないことも多いでしょう。ニートだろうと思うこともあるでしょう。でもそんなものです。大学院生は、みんな毎日頑張っているのです…。ニートだなんて言わないで、応援してくれると嬉しいです(笑)
最後に大事なことを。
大学院には2つあります。修士過程と博士過程です。博士課程の学生は必死に研究に打ち込んでいる方が大半なようです。この記事は、あくまで一大学院修士学生のものなので、みんながみんな同じような生活をしているわけではありません!